「本気で和太鼓に取り組みたい」と日本への留学を決意。社会人和太鼓チームに所属し、日本各地に演奏に出かけるなど、和太鼓奏者として活躍中!
総合政策学部 総合政策学科 4年
CHEN Hsien-Enさん(2025年10月取材)
出身地の台湾で幼少期に観た日本の和太鼓集団の演奏に魅了され、「いつか日本で和太鼓に取り組みたい」と考えていたCHEN Hsien-Enさん(以下、ションさん)。念願叶った今、3つの社会人和太鼓チームと大学の公認団体「和太鼓団体 咲楽」に所属し、忙しくも充実した毎日を過ごしています。
今回はションさんに、和太鼓を始めたきっかけや現在の活動内容などについて伺いました。
―最初に、和太鼓を始めたきっかけを教えてください。
3歳の頃、国際的な打楽器の音楽フェスで日本の和太鼓集団「鬼太鼓座」の演奏を偶然観て、その迫力と体の芯まで響くような音、力強いパフォーマンスに魅了され、憧れたのがきっかけです。台湾で和太鼓を習える場所を探し続け、小学1年生の時に教室に通い始めました。その後、より深く和太鼓を学びたくて、4年生になったタイミングで日本人の先生が立ち上げた教室に移りました。北海道で行われた音楽イベントで、和太鼓の演奏を披露したこともあります。
―日本への留学を決めたのはいつ頃でしたか?
高校1年生の時です。両親や祖父母が貿易関係の仕事をしており、父の仕事の都合で2年に1度日本へ遊びに来ていたこともあって、もともと日本には馴染みがありました。そこから日本に興味を持ち始めて、「日本で和太鼓に挑戦してみたい」と留学を決意しました。在学していた高校が南山大学の協定校だったため、指定校推薦制度を利用できたのはありがたかったです。留学が決まってから、半年くらい集中して日本語学習に取り組みました。ただ、入学時はコロナの流行真っただ中で入国できず、1年目の前半はオンライン授業。半年経ってやっと日本に来ることができたんです。
―それは大変でしたね。日本に来てすぐ、現在所属している社会人和太鼓チームに入られたのですか?
いいえ。日本に来た当初はまだ言葉が上手くなくて、日本語での交流が難しかったのもあり、実際にチームに入ることができたのは2年生の時です。台湾の先生の紹介でとあるイベントに参加して、そこから縁が繋がって現在メインで活動している「まといの会」「夏椿」に所属することになりました。
それに加えて大学の公認団体もあったので、慣れるまではなかなかハードな毎日でしたが、3年生になって少し余裕ができたタイミングで別のチームへの誘いを受け、現在は3つの社会人チームと大学の公認団体、計4つの団体に所属しています。スタイルの違う複数のチームに所属することで活動の幅が広がり、また学生だけでなく社会人の方々と共に活動する中で、技術面だけでなく精神面でもたくさんのことを学ぶなど、毎日充実しています。
―各地のお祭りや企業主催のイベントなどで演奏する機会も多いと伺いましたが、いかがですか?
日本各地へ足を運ぶので忙しくて大変な面もありますが、とても楽しいですね。
例えば地方のお祭りでは、内側からの熱気や一体感を大切にするため、地元の方たちと一緒に山車を引いて、お酒を飲んだりしながら話をして…と、演奏以外の部分でも積極的に参加しています。その土地の文化や伝統を肌で感じることができる貴重な機会ですし、「自分たちの演奏がお祭りを盛り上げている」という実感もできて、とてもやりがいを感じます。
企業主催のイベントは、お祭りとはまた違った面白さがあります。報酬をいただく以上、「しっかりといいものを届けなくては」というプレッシャーももちろんありますが、個人的には、お祭りで演奏する伝統曲とは違った「創作和太鼓」の演目にチャレンジできるのがうれしいですね。
「磐梯山温泉ホテルby星野リゾート」での演奏や「45Rデニム祭り」のようなパブリックイベントのほか、企業の周年記念、インバウンドの外国人観光客向けのプライベートイベントなど様々な体験を通じて、たくさんのことを学ぶこともできました。
―大阪関西万博の1,000人太鼓にも参加されたんですよね。
はい!大阪の和太鼓チームから声がかかり、「夏椿」のメンバーで参加しました。毎月合同練習会があったのですが、大阪まで通うことは難しかったので、基本はオンラインでの参加で。当日に現場で1回リハーサルをして、そのまますぐに本番というハードなスケジュールでした。大きな会場で全体の音を合わせなくてはいけなかったため、高い集中力が必要でしたが、なんとかやりきることができました。歴史的な舞台に立ち、チーム演奏で金賞をいただけたことは大きな喜びでした。
―大学の公認団体「和太鼓団体 咲楽」を再開させた経緯についても教えてください。
入学当初、学内の和太鼓団体がコロナ禍で休止状態だと知って残念な思いをしました。諦めきれず、2年生の時に学生課の協力を得て、学内の太鼓経験者を探して声をかけ、無事復活させることができました。現在は指導者という立場で、仲間たちと一緒に活動の幅を広げています。
「学内に和太鼓の魅力を広めたい」という思いから、ゆかたフェスとコラボしてのライブイベントも行っています。メンバーのモチベーションアップにもつながりますし、ここでの演奏を見て和太鼓に興味を持ってくれる人もいて、今後も続けていきたいイベントです。
また、これまでの活動経験を、国際センター主催「国際交流ミーティング」内の企画「先輩connecting!」で留学生に紹介しました。
―毎日忙しいとは思いますが、学業との両立はいかがですか?
「平日は学業、休日は和太鼓」を基本に、徹底的なスケジュール管理を行うことで何とか乗り切っています。週末は和太鼓の稽古やイベントの時間として確保したいので、授業の予習復習や課題は空き時間に集中して進めるなど工夫しています。慣れるまでは正直大変でしたが、履修の流れも把握できるようになり、集中力もついたのか、今はいい形で回せるようになってきました。
―最後に、留学を考えている人へメッセージをお願いします。
「まといの会」で来年、台湾公演を予定しているのですが、実はその舞台が、私が和太鼓を始めるきっかけになったあの打楽器フェスなんです。台湾にいた時は毎年観に行っていたので、まさかそこに自分が出られるとは!とうれしい気持ちでいっぱい。今はそこに向けて、より腕を磨いていきたいと練習に励んでいるところです。また、今後は大学院に進学して日本の企業に就職し、和太鼓と仕事を両立できると嬉しいです。
このように、日本に来て和太鼓を通してたくさんの人と出会い、様々な経験をすることができました。その一つひとつが私の財産となり、自分自身かなりレベルアップできたとも感じています。
みなさんも、何か一つ夢中になれることを見つけて、臆することなく挑戦してみてください。勉強との両立は大変かもしれませんが、それが留学生活を何倍も豊かでかけがえのないものにしてくれるはずです。