18歳で起業し、いくつもの事業に挑戦!現在は株式会社KANNONのCEOとして、情報格差のない社会の実現を目指す
総合政策学部 総合政策学科 4年
山下 青夏さん(2025年3月取材)
南山大学入学後、若年層向けSNSコンサルティング事業をはじめ、様々な事業を立ち上げてきた山下さん。現在は株式会社KANNONの代表取締役CEOとして、「情報格差のない世界」をビジョンに掲げ、すべての人々が平等に情報へアクセスできる社会の実現へ向けて、研究開発とサービス提供に注力されています。
今回は山下さんに、起業を志した理由や現在に至るまでの経緯、今後挑戦してみたいことなどについて伺いました。

―最初に「起業しよう」と考え始めたのはいつ頃ですか?
大学1年生の夏頃ですね。大学に入ってすぐ、実家を出て一人暮らしを始めたので、生活費を自分で稼ぐ必要があったのですが、アルバイトだけで賄うのがなかなか大変で、最終的に起業するしかないと考えました。キャンプ用品のレンタル事業や学生と社長のマッチングサービスなど、いくつかの事業を立ち上げる中で、最も成功したのがSNSでのコンサルティング事業でした。内容としては、「SNSの投稿を分析して、その結果をExcelでまとめて提出する」のがメイン。他との差別化を図るために、「感覚的な部分をどのように数字に落とし込んで伝えるか」にフォーカスして自分なりに工夫を重ねました。ちょうど大学の授業でExcelでの分析方法を学んだところだったので、それがとても役立ったのを覚えています。
―その後、SNS事業を売却して、知見のないシステム領域に飛び込んだと伺いました。
はい。SNSの事業は1年弱続けて、売り上げも出てくるようになっていたのですが、新しい領域でチャレンジしたいと思い、引き継いでくれる人を探して譲りました。
あの頃はスタートアップが流行っていた時期で、テック系に興味があったのが大きかったですね。仮想空間の特許技術を活用したディープテックビジネスを立ち上げ、エクイティとデッドで数千万円の資金調達を実施しました。ただ、今振り返ると、難易度の高いことにいきなり挑戦しすぎたなという反省もあります。

―現在の株式会社KANNONを立ち上げる前には、事業のヒントを探しにイギリスへ行かれたのですよね。それはなぜでしょうか?
ある人から「移動距離はイノベーションの距離。どれだけ遠くまで移動したかが、自分の価値観を壊すカギになる」と言われたことがきっかけです。「遠ければ遠い方がいい」と考え、約1年間かけて、海外と日本を行き来しながら生活していました。長い時で2~3ヵ月ほど向こうに滞在しましたね。それまでは海外経験がほとんどなかったので、価値観や考え方の違いに衝撃を受けたのを覚えています。
事業のヒントを見つけたのは、ふと立ち寄ったイギリスのハンバーガー店。「こんなところでもアクセシビリティ対応しているんだ」と驚くと同時に強く惹かれました。日本にはまだ根付いていない価値観だと感じ、だからこそ「これを事業にしたら勝てるな」と確信しましたね。
―会社を立ち上げてから、現在の形に作り上げるまでの経緯も教えてください。
立ち上げメンバーは私を入れて3人、そこに専門家として医師を1人招き入れて、専門知識やノウハウを社内に蓄積しました。
まず取り掛かったのが、当事者となる方たちへのヒアリング。「実際に困っていることを聞いた上で作らないと意味がない」と考え、50名以上の方たちにお話を伺ったんです。その中で、例えば買い物一つとっても目が見えにくい方だと「靴のサイズを探すのがすごく大変」というように、細かい部分で不便さを感じていると知り、驚かされました。
他にも、年齢を重ねて目が見えにくくなり、新聞を読むのを止めたという方もいらっしゃいました。私たちが当たり前に過ごしている日常とこんなにも違うんだなと改めて気づかされ、そこで集めた「リアルな困りごと」を元にプロダクトを構築していきました。そうして出来上がったのが、障がいや年齢に関わらず、すべての人が平等に情報へアクセスできるようにとウェブのバリアフリー化を目指した「フェアナビ」です。
大学3年生の12月に新サービス、「フェアナビ」をリリースして、半年ほどで500万人ユーザー/月を達成しました。それからサービスの医療的なノウハウを活用して研究開発のシンクタンク的な事業を立ち上げ、人それぞれの見え方について大手企業さんと研究したりしています。実はフェアナビを最初に導入していただいたのがSTATION Ai株式会社でした。リリース前からヒアリングをしていて、サービス内容をお話しした上で夏頃にはご契約いただいていました。

―南山大学での「NANZAN SPARK 講演会」をはじめ、ご自身の経験を「伝える」活動も行っていると伺いました。
はい。私自身、たくさんの人に助けられて得た知識や経験を、別の人に還元して力になれたらと考えて活動しています。あまり目立ちたくないタイプなので、事業について周りの友人にもほとんど話さないのですが…大学での講演会では、自分のつたない話をみんな熱心に聞いてくれて、とてもうれしかったですね。
―起業に興味がある学生へ、メッセージをお願いします。
正直、大変な部分も大きいので、あまりお勧めはできないです(笑)。ただメリットやデメリットに関係なく「やりたい」という強い思いがあるなら、絶対にやるべきだと思っていて。知見のある人に相談しながら、素直に事業を進めていけば意外とどうにかなります。
私自身、デザインもプログラミングもできないけれど、そこはできる人に任せて、常に「自分にしかできないこと=自分の市場価値」を考えて試行錯誤してきました。まずは行動してみることが大事だと思うので、ぜひ挑戦してみてほしいです。
―最後に、これから挑戦してみたいことについて教えてください。
大学入学時に提出した小論文にも「情報格差をなくしたい」と書いていたんです。会社のビジョンと一致しているのですが、改めて考えるとすごいですよね。
今後はいろいろな分野に挑戦していきたいと思っていますが、今特に興味があるのが、「目の見え方」や「視力」、そして「目の使い方」に関する領域。「情報格差をなくす」という軸を中心に、様々な事業を展開していくことで、「みんなが生きやすい、より良い社会や仕組みの構築」に貢献していけたらと考えています。採用に関しても幅広い職種で募集しているので、興味があればお声がけください。皆様と会えるのを心から楽しみにしています。
株式会社KANNON https://kan-non.jp/