南山生

「地域応援ファンディング『あいちあい』」を考案し、「キャンパスベンチャーグランプリ 第19回中部大会」で中部経済産業局長賞を受賞!

社会科学研究科 経営学専攻 1年
菜切 翔さん(2022年3月取材)

日刊工業新聞社主催の学生ビジネスプランコンテスト「キャンパスベンチャーグランプリ 第19回中部大会」に出場した菜切さん。若者が起業しやすい環境を整えることを目指したサービス「地域応援ファンディング『あいちあい』」で、見事「中部経済産業局長賞」を受賞しました。
今回は菜切さんに、起業に対する想いや大学院での研究、将来の目標について伺いました。

 

―まずは、「キャンパスベンチャーグランプリ」に出場を決めた理由を教えてください。

出場しようと思ったのには、3つ理由があります。将来的には起業したいと考えているので、その前段階として、自分の力を試してみたかったというのが1つ。そして、ビジネス案に対する専門家の反応を見たかったのが2つ目の理由です。3つ目の理由として、「学部生時代のリベンジを果たしたい」という想いもありました。

―学部生時代にも、「キャンパスベンチャーグランプリ」に参加されたんですね。

はい。私が所属していた川北ゼミでは、3年生で企業の商品開発に携わり、その後に「キャンパスベンチャーグランプリ」を通して一からビジネスを考えるというカリキュラムが組まれていて。前半部分では、実際の商品化を目指して競う商品企画の大会「Sカレ」に参加しました。テーマは「栄養ドリンクの若年層ユーザー拡大策」で、一人暮らしをしている子どもへ、親が手軽に栄養ドリンクを仕送りできる仕組みを考えました。そして、その案をベースにしたもので「キャンパスベンチャーグランプリ」に参加。結果は残念ながら本選落ちでしたが、その時にビジネスを一から立ち上げる面白さを実感しました。同時に自分自身の足りない部分も分かり、ビジネスを学問と実践の視点からより深く学びたいと思うようにもなりましたね。

 

学部生時代に参加した「第17回キャンパスベンチャーグランプリ」

―今回は、どのようなビジネスプランで出場されたのですか?

「地域応援ファンディング『あいちあい』」という、若者の起業を支援するサービスを考案しました。商品購入代金の一部を企業支援金に充てる寄付付き商品の仕組みを利用して、愛知県を舞台に新たなプロジェクトにチャレンジしたい「挑戦者」と、その活動を支援したい「応援者」を、愛知県に所縁のある企業の商品を通してつなぐという仕組みです。またリアルの場での出会いも大切にしたいと思い、各分野で活躍する愛知県の著名人のトークイベント「あいちあいTALK」や、ピッチイベント兼交流イベントである「あいちあいMEET」も考えました。

起業を目指して情報収集していく中で、資金調達やファン作り、人脈形成の大切さと難しさが分かってきて。「地元に密着したサービスを作ることで、愛着心が生まれ応援してもらえるのではないか」と思ったのが、「あいちあい」考案のきっかけです。

 

「あいちあい」のイメージ図

菜切さんが作成したプレゼン動画

―資金調達やファン作り、人脈形成について、どのような部分が難しいと感じたんですか?

近年、クラウドファンディングやSNSの普及で起業へのハードルが低くなっている一方で、いろいろな課題も見つかっています。例えばクラウドファンディングでは、「コロナ禍で入場者数が減って困っている水族館に、エサ代を支援する」といったボランティア系の案件が圧倒的に強く、採択されるプランに偏りが出てしまっているんです。それに加えて、応援者の参加ハードルの高さや、情報が膨大化していて見つけてもらいにくいことなども挙げられます。

―そういった課題を解決するために、どのような工夫をされたんですか?

特に工夫したのは、地元住民であり消費者でもある「応援者」の巻き込み方です。「あいちあい」は支援者ありきのサービスなので、「参加しやすいこと」「興味を持ってもらうこと」の2点は特に注力しましたね。日用品メーカーと協力し、日頃の購買によって応援ができる「寄付付き商品」の仕組みを活用したり、ホームページ内で「挑戦者」の顔や事業内容、想いを見せるようにしたり。「あいちあい」の取り組みを広く知ってもらうために、商品の裏や売り場のPOPへの掲出、飲食店等にポスター・チラシを置かせてもらうことも考えています。

―菜切さんは起業を目指しているということですが、もともとは企業に就職することを考えていたんですよね。

そうですね。大学1年生の頃から就活を意識して活動していました。具体的には部活動への所属や、南山チャレンジプロジェクトで「世界料理総選挙」というイベントを主催したこと、産学連携をはじめアクティブに活動する「川北ゼミ」への所属などが挙げられます。「個人としての魅力を上げるにはどうしたらいいか」を念頭において行動していました。

 

菜切さんが主催した世界料理総選挙(中央が菜切さん)

 

所属していた川北ゼミ

―そこから、起業や大学院への進学に気持ちが変わったのはなぜですか?

就職活動をしていく中で、「起業したい」という想いが湧いてきたんです。何社か面接も受けたのですが、「入社したらこういう新規事業を興したいです」みたいな話をしていて、何か違うな…と思ってしまって。「新しいことをやりたいなら、自分でやった方が得るものは大きい」と考えて、起業を目指すことにしました。

大学院への進学を決めた理由は、恩師である川北眞紀子先生の存在が大きいですね。起業するにしても就職するにしても、最後は南山大学に戻って、先生のような教授になりたいと思ったんです。院に進めば教授という道にも近づけるし、起業の準備期間にもできるなと考えて、進学を決めました。もちろん、学問としてビジネスやマーケティングをより深く学びたいという気持ちもあります。

 

恩師の川北先生と

―大学院ではどのようなことを学ばれているんですか?

経営学全般を学んでいますが、中心はマーケティングや消費者行動についてですね。「ネタバレが購買意図に与える影響」というテーマで研究も行っていて、何度か学会にも出させていただきました。私自身、YouTubeでビジネス書の内容を要約したネタバレ動画を見て、実際に本を購入したことがあるんですが、そうやって身近な事象に結びつきやすい分、理解しやすくて興味深い学問だなと考えています。

―大学院で学んだことを、将来起業に生かしていこうということですね。最後に、今後のビジョンについて教えてください。

起業に関して、まずは在学中にスタートを切るつもりです。卒業する頃にはある程度動き出している状態にして、3年以内に黒字化することが目標。事業を拡大していく中で、自分が理想とする社会づくりに貢献できたらなと思っています。

そしていつの日か南山大学に教授として戻り、学生に寄り添いながら「現場」と「学問」の2つの視点でマーケティングを教えていきたいです。

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