卒業生

チベット映画を世界へ

文学部哲学科 1997年度卒業
松尾 みゆきさん

卒業後、テレビ番組制作会社でドキュメンタリーを制作。その後、日本語教師になる。2006年から中国青海省で日本語教育に従事しながら、中国語とアムド・チベット語を学ぶ。チベット映画『草原の河』『巡礼の約束』の日本語字幕を担当。

 

チベット人映画監督 ソンタルジャ氏(左)と松尾さん(右)

 私は卒業後、海外ドキュメンタリー制作を希望してテレビ番組制作会社で働いていましたが、現地でより深く取材したいと思い、日本語教師になり、海外へ移住することにしました。

 2006年に南山大学から中国青海省(チベット・アムド地方)の学校を紹介され、そこで2年間日本語を教えました。青海省はチベット人が多い地域で、学生の半分はチベット人でした。私はチベットについて何も知らなかったので、チベット人の生活を深く知りたいと思い、そのまま青海省に住み、ボランティアで日本語を教えながら、中国語とチベット語を学んでいました。

 2015年に日本への帰国を決め、帰国直前に、以前私が日本語を教えていたチベット人学生と9年ぶりに偶然再会しました。彼は9年前、映画を作ることが夢だと言っていましたが、家庭の事情で夢半ばにして田舎に帰った学生でした。当時、青海省の若者が夢を実現することは難しく、みんな諦めがちでしたが、彼は長い時間をかけて夢を叶えていました。その彼がスタッフとして制作したのが『草原の河』です。この映画はチベット牧畜民の家族の物語です。チベット人の等身大の姿を日本の方々にも知ってほしいと思い、監督のソンタルジャ氏や会社の仲間たちを紹介してもらい、日本での上映を目指し、みんなでがんばって来ました。多くの方のご尽力で、2017年に『草原の河』を日本各地の映画館で上映していただくことができました。チベット人監督の映画が劇場公開されたのは、日本で初めてのことでした。

 この出会いを通じ、一生をかけてやっていきたいことが見つかりました。最近は、映画はもちろん、まだほとんど作られていないチベットのドキュメンタリーやアニメの制作もサポートしています。これからもそれらの作品を日本に、そして、世界に紹介していきたいと思っています。

 

ⒸMOVIOLA『草原の河』 監督・脚本:ソンタルジャ/配給:ムヴィオラ/公式サイトwww.moviola.jp/kawa

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